自分が所有する車の他に、カーシェアリングで「利益を出すための目的で車を買う」というのは、ずいぶんと勇気のいるたくらみです。
そこで私なりに綿密に準備をしました。具体的にはネットでの検索を行い、十分に戦略を練ったつもりです。
【ネット検索】
インターネットで「エニカ 儲かるか」で検索すると、「儲かる」という人と、「儲からない」という人がいます。
詳しく数えているわけではありませんが、儲かる派と儲からない派が半々のように見受けられました。
つまりネットをざっと見たところでは、「どちらかわからない」わけです。
だとしたら、自分なりに「どうやったらもうかるか」という戦略を立てる必要があります。少なくとも「儲かる」と主張している人たちがいる以上、うまくやれば儲かるかもしれない。そのために必要なことは何なのかを探ろう。
これが準備段階での私の考えでした。
【メインドライバーの選定】
まず最初に考えたことは、「どういう人たちをメインドライバーとするか」です。主にどういう人たちが、私が所有する車をシェアリングで利用してくれるのかを想定しました。
車を借りたいと思う人の選択肢には、
(1)レンタカー(トヨタレンタカーなど)、
(2)超格安レンタカー(ニコニコレンタカー)
(3)タイムズのカーシェアリング、
(4)エニカの四つがあります。
その中でエニカを選ぶ人はどのような人々でしょうか。
車の使用料の比較(敵を知る)
まず、利用料金の比較です。トヨタ・アクアなどのベーシックカーを24時間借りる場合を見てみましょう。
(レンタカー)9,500円程度
(ニコニコレンタカー)4,000円前後
(タイムズ・カーシェアリング)8,500円程度
(エニカ)?
敵を知る(レンタカー、格安レンタカー)
(1)レンタカーは一番高価です。駅や空港の近くにあって、電話などでも簡単に予約できますし、24時間対応してくれるところもあります。利便性は高いが料金も高いというわけです。
(2)ニコニコレンタカーは、値段を安くすることを最優先にしています。私も以前使ったことが何度かありますが、車が古い、不人気車(つまりカッコ悪い)、営業時間が限定される(朝8時~夜10時まで)など、「安さのためなら多少の不便には目をつむる」という人が利用するのに適しています。
ハッキリ言って、ボロい車を借りることになる訳ですから、「ワクワク・楽しいレンタカー」とはなりません。
タイムズ・カーシェアリング
(3)タイムズのカーシェアリングは、レンタカーより多少とも安い値段です。また、車も新しくてきれいです。ニコニコレンタカーとは明らかに異なります。
ただし、タイムズのカーシェアは、毎月の会費を払う必要があります。つまり「毎月かならず車を利用する」というドライバーを念頭に置いています。
回数券が安くなるのと同じです。
回数券は期限があって、それを過ぎると使えなくなります。タイムズのカーシェアリングも同様です。でもその分安くなっている。
言い換えると、レンタカーよりは安いが、その安さを手に入れるためには、毎月、必ず車を使わなければならないわけです。
タイムズのカーシェアリングは、全国色々なところにたくさんあります。ですから、その会員は全国でこれを利用するでしょう。たぶんエニカのカーシェアリングは利用してくれそうにありません。
想定ユーザー
このように見てくると、エニカを利用するユーザーは次のように想定されます。
トヨタレンタカーのような高い金は払いたくない。→「安さ」
ニコニコレンタカーのような「安さのみ」を追求しない→「かっこいい、きれいな車」
タイムズのカーシェアリングのように、毎月コンスタントに車を使うわけではない→年に数回しか利用しない
このように、年に数回しか車を借りないわけですから、車を借りてどこかに旅行するというのは、その家族にとっては年に数回しかない「大イベント」です。誕生日、クリスマスと同様に「ハレの日」の行事です。
とすれば、家族は車を借りて旅行に行く日を数週間前から「心待ち」にします。ワクワクするような楽しいイベントです。宿泊を伴うのだったら、ステキな温泉宿を選ぶことだってあるでしょう。もしそうなるのだったら、車だってそれ相応の物でありたい、と思うのが普通でしょう。
それがベンツとかBMWなど、憧れの外車であったら最高でしょう。
「この前河口湖に行ったときには、BMWに乗ったんだ」と友人に話すことだってできます。「日常の生活では乗れない車」というのが、エニカのアピール・ポイントになると思います。
【エニカの料金体系】
エニカの想定ドライバーを上のようにとらえることは、エニカの料金体系にも沿ったものです。ここでエニカを使った場合、ドライバーが支払った料金のうちどれくらいがオーナーの取り分になるのかを見てみましょう
(オーナーの取り分)
例えば、あるドライバーが富士山の河口湖に旅行に行くことにしました。エニカで車を借りて1泊2日の旅行です。48時間車を借りるのに、車の使用料金は48時間で10,000円だとしましょう。
これに対してオーナーの取り分は9,000円です。エニカの取り分はわずかに1,000円、つまり10%に過ぎません。
「わぁ、随分と良心的な会社だなぁ」と思いました?
エニカのシステムは大変に優れています。
スマホのアプリが用意され、ドライバーが車を借りようと思ってそのアプリを開くと、自宅近くの車が表示されます。こんな優れたシステムが、わずか10%の手数料で利用できるなんて普通では考えられない。そういう料金設定だと思います。
これは読者の方がご自分でエニカのアプリを利用してみれば、きっとご納得いただけると思います。私がアプリ開発の会社をやっていたら、30%~40%の手数料を取らなきゃやりたくない。そういう優れたシステムです。
それをわずか10%の手数料で一般のオーナーに広く開放されているわけです。
「とんでもなく良心的な会社」なんです、一見すると…。
誰も気付かない(ふりをしている)裏
実は「裏」があるんですよ。
それは「保険料」です。
前回の記事でエニカの経営には損害保険会社のSOMPOが加わっていることをご紹介しました。それだけのことはあるんです(エニカは野球のDeNAと損保会社のSOMPOホールディングスの合弁会社「DeNA SOMPO Mobility」が運営)。
エニカで車を借りるときにはドライバーが支払うのは車の使用料だけではありません。24時間で2,000円の保険料がかかります。
ですから先に述べた河口湖への1泊2日の旅では、ユーザーは10,000円ではなく2,000円✕2=4,000円(2日分)を加えた14,000円を支払わなければなりません。
24時間で2,000円の保険料というのは、大変高額です。1ヶ月当たりで換算すると2,000✕30で60,000円、一年間だと6万✕12で72万円にもなります。
初心者ドライバーが任意保険に加入したとして、その10分の1の7万円でも割高ではないでしょうか。
ともかく「ベラボーに高い保険料」なわけです。SOMPOは笑いが止まらんでしょう、きっと。
結局、オーナーが受け取るのは、ドライバーが支払った10,000円のうちの9,000円ということなのではなくて、14,000円のうちの9,000円ということになります。率にすると約65%です。エニカの取り分は4,000円(約35%)です。
私がエニカの経営者だったら30%~40%の手数料が欲しいと先ほど書きましたが、まさにそうなっているわけです。
【再びネットの評価】
冒頭で「エニカは儲かるか」に関して、儲かる派と儲からない派がいるとお話しました。
儲からない派の記事をよく読むとたいていは、年式の古い薄汚れた(失礼!)車を安く貸しています。
例えば、1日2,000円で貸している方がいました。
これだと、24時間借りてドライバーは使用料2,000円+保険料2,000円の合計4,000円を支払います。対して、オーナーの取り分は1,800円(2,000円の90%)です。4,000円のうちの1,800円(45%)がオーナーに、残りの2,200円(55%)がエニカ側、ということになります。
つまり半分以上をエニカに吸い取られているわけです。これでは儲からないでしょう。
他方でエニカが儲かると主張している人達のほとんどは高級車のオーナーです。
テスラの電気自動車やら、ベンツ・BMWなどです。
例えば、テスラを1日3万円で貸したら、オーナーの取り分は3万円の90%ですから27,000円。
ドライバーの総支払額は3万プラス保険料の2000円で合計3万2千円。
そのうちの2万7千円(約85%)がオーナーに、エニカの取り分は僅かに5,000円(約15%)でしかありません。
売り上げ高の何パーセントがオーナーに行くのか。85%か(テスラ)、45%か(旧車)。
この違いが儲かるか儲からないかの差だと考えられます。
ですから、エニカで利益を上げるためには使用料を高くする必要があるということです。使用料を高くするためには、車が高価である必要があります。つまり「高級車」です。
テスラの高級車は1千万円を超えますから、そこまでは無理だとしても可能な限り高級な車であることが必要です。具体的にはベンツやBMWのような高級車を用意したいところです。これらの車を24時間レンタカー(トヨタレンタカーなど)で利用すると、2万~3万円します。これがもっと格安で利用できれば勝利の可能性は高いのではないでしょうか。
トヨタ・アクアの料金が9,000円だとして、BMWが1万2千円だったら、あなただってBMWを借りようと思いませんか?1万3千円のベンツだったらどうでしょうか?
そのように判断する人がどれほどいるかは分かりませんが、3,000円とか4,000円までだったら、余計に払ってもいいという人はいるのではないでしょうか。
これが私の出した結論です。
結局ドライバーは、年に数回のドライブ旅行をわくわくして心待ちにし、それは特別な「ハレの日」なのです。ですから、古くさくてカッコの悪い車はできれば避けたい(ニコニコレンタカーはいやだ)。
アクアのような車でもいいけど、それよりほんの少しの出費でベンツやBMWに乗れるのなら乗ってみたい。
これがドライバーの考えではないでしょうか。
いや、エニカで稼ぎたいと思うのなら、これしか選択肢はないように私には思えてしかたがありません。
想定ドライバーが決まりました。
「ハレの日」に少しだけ贅沢をしてベンツ・BMWに乗りたい、そういうドライバーをメイン・ターゲットにとらえる、ということです。
次は車選びです。

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